程聖龍 / 東京書籍

「仙人入門」とありますが、入門書の類ではありません。中国武術の達人である著者の半生記です。
ものすごい内容です。
本書は、著者の少年時代から始まりますが、小学生であった著者は地元の山で忍者(見習い)と出会い、そのまま忍術の先生の押しかけ弟子となってしまいます。そこでの主な修行相手は兄弟子である忍者犬。
中学生になると、忍術の修行をする傍ら、中国拳法の修行にも精を出します。そして高校生のある日、中国の深山で仙人との邂逅を果たし、仙術修行をも行います。
そして現在、内家拳八卦掌において、日本人唯一の武門四代目を継承し、程聖龍の名を受けるまでに至る、という。
忍者犬とか仙人とか、どう考えても普通に生きていれば絶対に出会うことのない人々(?)です。荒唐無稽な夢物語と捉えられても仕方ないかもしれません。
しかし、この作品全体を通して感じられること、伝わってくるメッセージはとてもリアルです。自分とは全く無縁の世界を通して語られる言葉は、やけにすとんと僕の胸に落ちてきました。
「強さ」とはなにか。「生きる」とはどういうことか。
難しい言葉と観念で語られるより、一人の人間の生き様と経験で語られる方がよっぽど分かりやすい、ということでした。