
井伏鱒二 / 中央公論社
なんかあの詩が読みたくなったので。無性に。
ここでいうあの詩とは、もちろん「勸酒」のことです。
何度読んでも、どうしたらたった五文字×四句の詩からあの訳が生まれてくるのか、井伏鱒二の感性に感服するばかりです。
うつくしいなぁ。本当にうつくしいなぁ。
漢詩本来の意味を踏まえた上で、井伏訳を読む。それは、そう、風船のイメージ。
小さな風船に、井伏鱒二の息が吹き込まれると、本質的には同じものでありながら、大きく姿を変えてしまう。どこまでも膨らんでしまう。
ああ、言葉は有限で、しかし、言葉によって喚起される人間の感性は無限であることだなあ。
『厄除け詩集』は漢詩の訳詩集なので、この他にも素晴らしい名訳が見受けられますが、「勸酒」にはかなわない。
言葉に疲れたときは、この詩集を読むといいかもしれない。