青木玉 / 講談社

過ぎた時の折々の想いと懐かしい風景。手もちの時間を彩るあれこれ。深く柔らかなまなざしで暮しをみつめる随筆68篇。
青木玉さんの随筆集。
この青木玉さんというひとは、幸田文の娘さんであり、つまり、幸田露伴のお孫さんであります。
学生時代、一体それがどういう企画だったのかは思い出せませんが、青木玉さんの講演会がありました。
講演会と言っても、講堂や大教室を使ったものではなく、中っくらいの大きさの教室でした。キャパは120人くらいだろうか。まぁ、大きくないことは確かです。
どういうきっかけだったのか、それも忘れましたが、そのときの講演を聴きに行ったのです。
そして惚れたのです。
会場が狭かったため、講演者との距離が近かったのもあったのでしょうが、本当に聴き惚れてしまったのです。
こんなにかわいらしいひとがいるのかと。話の内容はかなりうろ覚えなのですが、そのときの感動は覚えています。講演が終わった後、友人と「あんな風にかわいらしく年をとりたいものだ」というような会話を交わした覚えがあります。
本当に、このひとの感性はすばらしい。
種種多様な随筆、そのどれを読んでも、うつくしいのです。なにげない日々がいかに輝きに満ちているのか。いかによろこびに満ちているのか。いかにしあわせに満ちているのか。
大切なものを思い出す、というか、大切なものが自分にも確かにあったのだ、と、そういう根本のところを教えてくれます。
あぁ、あたたかいなぁ。