林 道義 / 文藝春秋

アマテラスは聖母マリアと同じ性質を持っているか? 前身は巫女だったとされているが、それは正しいのか──『古事記』『日本書紀』に登場する日本神話に欠かせない存在である女神には謎も多い。「母原型」「父との結びつき」「英雄を助ける」「自己犠牲」といったキーワードから女神像を分析すると、そこには思わぬ姿が現れた。ユング心理学の泰斗だからこそ書ける「新しい日本神話」、好評を博した『日本神話の英雄たち』に続く第二弾!
帯に書かれた「神話の時代から女はいつもミステリー」という文句にどうしようもなく心を惹かれてしまいました。
それに、日本神話に登場する女神たちを心理学で読み解いていくというのは、実におもしろそう。
わくわくしながら読み始めました。
「神話はその地に生きる人々の原風景」とは荻原さんの言葉ですが、本書で試みられているのは、その原風景を心理学的に分解していくというもの。
夢診断みたいなものですね。
ここでこのようなものが出てくるのは○○の象徴であり、ここでこのように行動するのは△△を表している……というようなの。
筆者はユング心理学の権威だそうで、おそらく本書に書かれた内容も綿密な分析と膨大な資料に裏打ちされたものなんでしょうが、「分かりやすさ」を追求したためか、どうも読んでいて腑に落ちないことが多い。
牽強付会というか、あらかじめ決められたゴールへと無理矢理誘導されているような感じ。
もやもやとした不満や疑問が溜まっていき、いまいち楽しめない。
も、ね、この人の文章が駄目だ。合わない。内容はそこそこおもしろいのに、読んでいていらいらする。
分かりやすく書こうと努力しているのは分かるんですが、それがかえって文章としての出来を低めている。もういっそのこともっとかっちりと論文として書いてあれば良かったのに。
なんかすごく残念。