宇仁田ゆみ / 祥伝社

案外、この世界も悪いもんじゃないって りん、君は知っているかい──?
祖父の隠し子・りんを育てることになったダイキチ
6歳児と30男が繰り広げる、なごみ系ちぐはぐ☆LIFE
宇仁田ゆみの絵は線がシンプルで書き込みが多くないのに良く映える。
志村貴子さんと雰囲気が似ていると思います。
ああいうのが大好きなので、もうずっと前々から欲しかったんですよね。宇仁田さんのマンガ。
でも中々古本屋では見かけなくて、でも大判コミックを大人買いするのはちょっと抵抗があって、手を出しそびれていました。
でも、酒に酔った頭では、そんな値段のことなんて遙か忘却の彼方☆
ついやっちゃった……。
酒に酔った状態で本屋に行くとやばいですね。自制がまったくといっていいほど利かなくなる。
そんなこんなで手に入れた待望の宇仁田ゆみですが、もう、ものすげー良かった。
やっぱり絵がきれいー。
シンプルな線はうつくしーなー。読みやすい上にきれいってのはマンガとして最高ですね。
あ、もちろん、絵だけじゃないですよ。
お話も最高。
ふしぎな縁で一緒に暮らすことになった大吉(30歳・独身)とりん(6歳児)がどうにかこうにか「家族」として暮らしていく。
とはいっても、現実はやはり厳しくて、ふたりだけではとてもまともに歩けない。しかし、ふらふらとよろけた先には同じようにふらふらしている人たちがいて、お互いに少しずつ支えたり支えられたりしながらなんとか前に進んでいく。
どっしりと支えてくれる人なんてどこにもいなくて、みんな結構いっぱいいっぱいで生きている。でも、目の前の人がよろけた時に、肩を貸すことぐらいはできる。
そういうやさしさに満ちあふれたお話で、読んでいてほろりとさせられっぱなしです。
たとえば。
大吉がりんを預かることになり、保育園のこと、自分の仕事のことで悩みます。
ばりばり働いて残業までして、それで独りで子育てをするなんてできる話じゃないからです。
そして辿り着いた先は「残業のない課に異動してください」。
仕事ができ、実績もある大吉がそう言いだしたことで職場は大騒ぎ。上司には事情を話して了解を得られたけれど、いい顔はやはりしてもらえない。現場は大わらわ、部下はごねる。
しかし、大吉は思います。
「うちの課は俺がいなくなってもいずれは落ち着く まわしていけるハズ じゃないと組織としておかしい
でも りんのことはそうはいかん!! …と…思う
俺の考えは間違ってない… ハズ…… たぶん……」
こういう結論を出せるってこと、もうそれだけで頬がゆるみます。
そして、それを確信を持って断言してしまうんじゃなく、悩み迷いながらもその結論に向かう、というところがすごくいい。
絶対の正解なんてないけれど、最善の手はやはりある。
ベストじゃなくてベター。
難しいけれど、これは生きる上での普遍的な原理ですよね。