オノ・ナツメ

大阪の夜坂一味に身を寄せた弁蔵と宗次。
しかし、まずは「悪党」としての力量を試されることに。
不案内な大阪の町をさまよい、なんとかその腕を見せようとするふたりだったが、そこにはとんでもない罠が…?
ようやく大阪にたどり着き、夜坂一味に身を寄せることになった二人ですが、やってることといったら船頭と料理人。
悶々としながらも、年が明ければなにか事が動くだろうと期待を寄せるわけですが、全く別のところから事態が動き、紆余曲折あって弁蔵が一度故郷に顔を出すことになります。
この弁蔵の里帰りが、キく。
こう、胸にずばずばと突き刺さる。
親子、兄弟、そして家族。
どんなに憎まれ口叩いてどつきあおうとも、そこには大きな情があるわけで。
というか、深い情愛があるからこそ、そうした本音のやりとりができるわけで。
いまのご時世、どんなに遠く離れようと電話一本、メール一通で距離を省略することは可能ですし、その気になれば日本全国一日あれば足を伸ばせるというものです。
しかし、この時代、もちろんそんな技術はなく、というかそれ以前に頑強な身分制度と藩体制があるおかげで出奔したら最後、もう二度と会うこともままならなくなってしまいます。
『夏目』じゃないですけど、情のこもった交流のあとに訪れる別れは、それだけ大きくつらいものになってしまいます。
情に厚く情に脆い弁蔵とクールで斜に構えた宗次の組み合わせだからこそ出せる、絶妙のバランスでこの「別れ」が描かれていました。
達者でなあ
この一言に込められたものの、なんと大きなことよ!
セリフと表情と感情が見事に組み合わさり、ぐっとぐぐっと胸に迫ってくるものがありました。