佐原ミズ / 小学館
片想い中の少女に想いを伝えるため、アルバイトを始めた市川君。
そして相手の少女も、別の男に叶わぬ恋心を寄せていて…
想いめぐる花火大会、それぞれの恋の結末は――!?
誰かのために、自分のために。
"好き"に向き合う瞬間、青春は動き出す――
どんなに他人が否定したって、自分が心惹かれるのならそれは貴方にとって正解になる…
スペイン舞踊を通じて少しずつ前を見ることができるようになってきた三人ですが、今回は市川君がメイン。彼のひと夏の恋と冒険ってところでしょうか。
チャラ男に都合のいい女扱いされ、貢がされている。
その境遇に甘んじながらも、常にイライラを隠しきれず誰にでも当り散らす女の子。
こうして文字にするとものすごく嫌なやつですが、実際に彼女の行動を見ているとさらに輪をかけて嫌な女の子にしか見えません。
しかし、市川君はそんな彼女が気になり、心配でたまらないのです。
「うわー嫌なやつー」と目を背けてしまうとそこで終わりですが、市川君はそこで目を背けずにいることで、彼女の良い面のみならず、なんとチャラ男の良い面まで見つけてしまいます。
誰にでも長所と短所がある、とはたまに聞く常套句ですが、短所でその人のことを見限らず、長所を見つけるまで向き合うということのなんとむずかしいことか。
それができたのは、まぁ恋の力があったのは確かですが、それにしてもやはり市川君の持つ懐の深さがなにより大きかったからだと思います。
結果彼は失恋してしまったわけですが、市川君には仲間がいますからね。
一緒に歩いてくれる友達がいるってのも、大きな力となりますね。
まったく。
嫌な奴を描いているのに、最後まで読んでみるとみんなちょっとさみしいところを抱えたいい奴ら、になってしまうんだから。
佐原ミズも相当なお人好しですよ。