集英社

「ハチクロ」立ち読みしようと手に取って、そしたら表紙になんだか引っかかるものがあって、あれ? と思ってよく見てみたら。
谷川史子さんの読み切りと榎本ナリコの新シリーズって……。
買えってか、ああ買うともさ。
「ハチクロ」。
とうとう決着がついてしまったなぁ。
河原での森田さんの一瞬の表情と油断が悲しい。悲しすぎる。でもね、森田さん、みんながあなたの周りにいるのは、あなたがあなたであるからなんだよ。それはもう一片の間違いもなく。
「これで終わりと思うなよっっ 覚えてろよ!?」
「ああ 覚えてるよ
絶対に治すよ ──で絶対にまた描けるようになるから 安心しろ」
花本先生とのやりとりを読んで、鼻水がぐずぐず垂れてしまうくらいに泣いてしまった。人を思う、誰かを思うというのは才能ですよ。才能。森田さん、あなたの周りにいる人は、みんなすごい才能を持ってますよ。あなただけじゃない。そんなもんですよ。
そして花本先生カミングアウトー。
あんな学校真剣に嫌だ。でも、ちょっとうらやましいのも、また確か。
榎本ナリコ、予想に違わずいいものを描くなぁ。
「涙」がテーマの連作短編シリーズだそうで。
彼女は、感動してこぼれる涙とか、悲しくて悲しくて堪えきれない涙とか、切なくて胸が張り裂けそうな涙とか、そんな劇的なのじゃなく、ふとした隙間をとん、と突いてくる涙を描ける。
いくら読んでも飽きないです。
谷川史子さんのは珍しく群像劇。読み切り(といっても60ページあるんだけど)で群像劇は難しい。
だって、明らかにページ数が足りないもの。
うるさすぎず、かといって描写が足りないわけでもない、こんなぴったりと収まるような作品を描けるなんて。ああ、感嘆。
後味すっきり、なんていい気分。「積極」はすさまじく良かったけれど、こういうのもいいね。