第1話はたった4ページ。そして台詞は最期のコマにだけ。
「水分を摂らずに運動すると血管がつまる……」
「そんな ナカさんはまだまだ大丈夫ですよ!!」
「ドロドロになるんだ……」
そして枠外に手書き文字で「ドロドロ血流とたたかう男 ラーメン店店主 中マコト(41)」。
ああ、なるほどね。
タイトルの適当さ加減と、ゆる~い感じとがいい具合に絡まってほっこりします。
まぁ、bassoってオノナツメのBL漫画用の別名なので、「運動」がどんなものなのかは推して知るべしって感じで、内容は全然ほっこりしてないんですけど。そのギャップがまたいい、みたいな。
でも、実は表題の「ナカさんのながれ」より、同時収録の「くろぐろ」の方が好きでした。
「くろぐろ」の方はおっさんと青年の話で、別に好いた惚れたとか絡みとかがあるわけじゃなく、終始、なんかこう微妙な感じの距離感でした。
見事な若白髪をまったく気にしていない青年(秋山君)と、髪を黒く染めているおっさん(矢田さん)。常々苦々しく思っていた矢田さんは、ある日秋山君に言ってしまいます。
「秋山君 君とは並んで立ちたくないんだ 特にレジとかお客さん相手にするとき」
「どうしてです? 矢田さんはベテランでいろいろ教えてもらいたいのに 近づけないのはつらいです」
「髪の毛染めたらいいよ 近づいて」
そして、無邪気で素直な秋山君は薬局で髪染めを買います。そこで偶然矢田さんと出会い、矢田さんを食事に誘います。裏も悪気もなにもなく、無邪気で素直に自分に話しかけてくる秋山君と過ごす内、矢田さんの心境に変化が訪れます。
「秋山君 さっき買った白髪染め あれ私が買いとる」
「えっ」
「心の狭い男で悪かった 君はそのままでいい」
荷物のアップとアパートの外観をバックに、この台詞だけで第1話は終わります。
人物の表情が描かれないのが、とてもいい演出として効いています。
この台詞を言ったとき、矢田さんはどんな顔をしていたんだろう、秋山君はどうだったろう。簡単に言えばそんな情景を自分好みに想像できる余地が、このマンガにはたっっぷりあって、そうした余白(というよりは余韻に近いか)が、この人のマンガの大きな魅力でもあるわけです。
もっと「くろぐろ」読みたいな。