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よしながふみ / 白泉社
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この国は滅びるのか。
男女逆転大奥の黎明期。
家光、そして有功の覚悟が、時代を動かす。


ぞっとするほどおもしろい、パラレル江戸時代の大河マンガ。

何故将軍は女でなければならないのか。
男女逆転社会を、「そういうもの」としてしまえばそれまでだったのに、このマンガでは「旧来からの男社会が、如何にしてこうなったのか」、をものすごく丁寧に描いている。
びっくりするくらいに史実との擦り合わせができていて、パラレルSFモノではなかなか拭いきれない違和感が全くない。
鎖国の完成、外様大名の改易、田畑永代売買禁止法といった史実が、男女逆転の流れの中でまさに流れるように触れられていく。その中で、何故女性が髪を結うようになったのか? ということにも「大奥」的な答えを持たせつつ、男社会から女社会へと移行する際の歪みや軋轢を無視することなく、それがいかにして現れ解消されていくのか、も見事に織り込んでいる。

そして、そんな大河歴史モノとしての設定を背景に、魅力的なキャラクターの愛憎がもつれ合う。
この愛憎劇は、もう、よしながふみの得手中の得手といっても過言ではない、繊細な表現とすっきりとしたコマ割りで一気に引きつけられる。

3巻での見所は、やはりなんといっても家光と有功が引き離される場面。
「一年も側に侍りお世継ぎができぬのはそなたが種なしだからであろう」と、春日局が新しい男を家光にあてがうよう有功に言い放ちます。
それに対して有功は「そんなのけだものと同じだ、そこまでして血を繋げてなんになる。そこまでして守らねばならない徳川家とはいったいなんなのだ」と詰め寄ります。
春日局は、「それは戦の無い平和な世の事です」とただ一言だけ返し、有功は言葉を失ってしまう。
上手いなぁ、と思うのは、この一言で一見すると憎まれ役になってしまいがちな春日局に、これ以上はないというくらいの芯が一本通ってしまうことです。
そして、こちらがわでそれを読んでいるだけの読者が納得させられてしまうのに、当事者である有功が納得しないわけがありません。
家光の狂気、有功の狂気が描かれ、しかし、そのまま狂気におぼれ「愛」という名のフィルターでうやむやにするのではなく、そうした一面を抱え込むのが生きるってことだろ、といわんばかりに、ふたりはその後も当たり前のように生き続けます。

ため息が出ます。よしながふみは、最高です。
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