梨屋アリエ / 講談社

わたしを包む、にせ物の星。だけどそれは、にぎやかで温かい。
東京都 世界谷の不思議話警報音少女に翼の生えた少年、空中に浮かぶ先輩、そして……。
中学3年生の多彩な「自意識」を投影した、きらめく4編のショート・ストーリー。
初っ端から目をまん丸くしてしまった。
当たり前の世界の中に、ちょっとだけふしぎを混ぜ込んだ話ってのはよくあるけど、これは、なんというか少し違って。
うーん、少しふしぎを混ぜ込むとき、書き方は二つだと思うんです。
ひとつは、そのふしぎがその世界では当たり前のことだという書き方。
もうひとつは、その世界でもふしぎはふしぎなのだという書き方。
でも、この作品は、そのどちらでもないというか、どちらでもあるというか。
ふしぎは確かにそこにあって、そしてそれを当たり前のことだと受け止めている人がいる傍ら、ふしぎはやはりふしぎでしかないと感じている人もいる。
その空気の微妙さ、よく言えば独特さがおもしろい作品でした。
どのお話も主人公は中学3年生。
義務教育の最後の年にして、はじめて受験という競争社会へと突き落とされる年頃です。そして、肉体も精神も子どもとも大人ともつかないどっちつかずの時期でもあります。
この時期って、自意識が肥大しますよね。根拠のない万能感に包まれたり、無能感に苛まれたり。自分と世界が確かに一続きである、という意味の分からない自信に満ちあふれている頃ですよ。
あらすじにもありますが、この作品で出てくるふしぎは、みなそれぞれ主人公たちの自意識を世界へと投影したものなのだと思います。
つまり、ふしぎを見つける、または見つめる、という行為そのものが、自分を見つける、自分を見つけるという行為の寓意として描かれます。
すると、「プラネタリウム」というタイトルがものすごく洒落ていてうつくしく見えてきます。
どのお話も、「プラネタリウムに行く」ということでお話が収束するという書き方も実に上手いと思えてきます。
個人的には「第4話 つきのこども」が痛々しくもうつくしく、とても好きでした。