西 炯子 / 小学館
つぐみと海江田の結婚生活がはじまった。
新婚早々、仲人を引き受けたり、遠縁の子供を預かることになったり…と、慌しい日々。
ふたりだけの、甘い時間は訪れるのか?
オトナの純愛を描いた大人気作、スピンオフ全7話を収録!!
本屋で現物を見かけて二度見した。4巻? 確かに3巻で完結して、雑誌連載も終わってたのに?
なるほど、「その後」を描いた短編集なのか。納得。
本編がどちらかというとつぐみ視点に寄っていたせいか、この巻では海江田先生に寄ったお話が多かったですね。
「spin-off2 まことの家」
本編にも登場したまこと君のお話。
「大人」の対応を取ろうとするつぐみに対し、海江田先生はやさしいのか厳しいのかよくわからん対応をします。はたから見て、それがどんなに親切で最良の選択に思えても、子供にとってそれは「与えられたもの」でしかありません。それがどんなにつらくても難しくても、たとえ残酷であろうとも、自分で選ばせるべきだ。
海江田先生はどうしても自分と重ねてしまうんでしょうね。だから怖いんだと思います。どちらが本当に良いことなのかは、本人にしかわかりませんから。
「spin-off5 厄介な女」
若かりし頃の情熱にあふれた海江田先生が十和さんを攫いに来る話。
このとき、若き海江田先生が駆け落ちをあきらめた究極的な理由も、結局この部分――自分の生い立ち――に根ざしているのだと思います。詳しい事情はわからなくても、幼いつぐみから祖母を奪うことが、つぐみに自分と同じ思いをさせてしまうことと同義であると気づいてしまっては、そんなことできるわけがない。
それはつぐみのためを思って、というきれいごとではなく、純粋に自分のための選択だったのだと思います。
「spin-off6 男の一生」
この回で描かれる海江田先生の男泣き。どれだけの思いがあの涙に込められていたことか。
自分を捨てた父親とのウン十年ぶりの再会。
このシーンで、お互いの表情を描かないこの演出が憎い。
お互いどんな顔してたのかなぁ。苦しかったろうなぁ。
泣いて、寝て、一晩経って復活した海江田先生が旅館の女将さんに言う一言。
「……大丈夫です 待ってるもんがおりますから」
そして帰ってきた海江田先生を迎えるつぐみの言葉。
「どこへいっても 帰ってきたから それでいいんです
お茶にしますか?」
あああ、もう。
多くを語らず多くを見せず。一言一言が重い。
苦しくなるくらいいい漫画でした。