谷川史子 / 集英社

桜子には9つ年上で生物教師の兄がいる。彼女はそんな兄が大好きで…
表題作含む五編を収録した短編集。
コーラスで読んだ「積極」があまりに直球ど真ん中だったので、このひとの他の漫画を読んでみようと思いました。
…………。
撃 沈 。
表題作の「花いちもんめ」が抜群にいい。ネタ自体はいろんなところで見かけるけれど、この落としどころは絶妙すぎ。
「梗ちゃんなんか 梗ちゃんなんか しあわせになっちゃえばいいのよ」
この一見するとなんてこたあない台詞に込められた感情を推し量ると、頭の隅がじーんと痺れたようになります。
ラスト3ページは実に見事で、胸のすくような快感を伴います。特に。「だいすきだからね─────っ」に続く会話が描き文字なのがたまらない。もちろんそれは二人の物理的な距離感を表した演出でもあったんでしょうけど、やさしい絵の横に添えられたやわらかい文字と、大きく力強い活字で紡がれる「だいすき」の対比がね、桜子ちゃんの気持ちを押しつけがましくなく表現しているように感じました。
ものすっごいさわやかで、だから切ない。そんな作品でした。
あと、「祭・長月」も好きだなぁ。勘違いも誤解もすれ違いもなく、ただ、一人の女の子の臆病で醜い部分のみに特化したストーリーが物珍しくもあり、それでも共感を覚えてしまうのは、それが誰でもが当たり前に持ちうる感情だからですね。いくら蓋をしてみても。美化をしてみても。