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菅浩江 / 早川書房
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新作アニメ「ダグリアンサーガ」のキャラコンテストで最優秀賞を受賞した靖子。彼女のもとに送られてきた村娘アーダのフィギュアは、最新テクノロジーで自在に動き、設定に応じた感情まで持っていたが……。少女とフィギュアの優しく切ない交流を描き星雲賞を受賞した表題作、高校在学中に発表されたデビュー作「ブルー・フライト」、文庫初収録のファンタジイ「月かげの古謡」など、初期傑作8編を収録した待望の作品集。

ぐわー。や ら れ た 。
なにこのハイレベルな短編集! もう大好きだよ菅浩江。
『永遠の森 博物館惑星』だけじゃなくて、そのほかの作品も買い集めるよ。


表題作の「そばかすのフィギュア」が、も、とんでもなくすばらしかった。
“自ら考え動くフィギュア”を支えるSF的設定、そのフィギュアに重ねられる作中作、その中で見せられる少女の恋と挫折と成長。
この二本柱が恐ろしく強固。

何故フィギュアが動くのか、というギミックが、靖子とアーダの別れの遠因となる。
また、フィギュアであるアーダと人間である靖子。人は、人ならざりしモノとの交流を通して、そのモノに自らを投影させ、その自らの分身を客観視することで成長します。
これは、単体でSFやファンタジーなどでよく使われる手です。
でも、この作品は、このふたつが隙もなく絡まり合い、融合します。

ひとつの出会いがひとつの別れを生み、そこにひとつの世界を生み出す瞬間。
それはまさに物語の生まれる瞬間と言い換えてもいいのですが、つまり、その希有な瞬間が、この作品には秘められています。
ほんの30ページ程度の短編に。
呆然とします。


また、「お夏 清十郎」も良い。非常に。
時遡能力により、過去の名演を実際に見聞きすることのできる日舞の家元が主人公。しかし、その技術はまだ未完成であったため、時遡を行う度、主人公の身体は蝕まれ、踊ることはもとより、動くことさえままならぬ身体となってしまう。
いまは亡き名人たちの演技を間近で見、自らのものとしながらも、現実では踊れない自分。弟子たちに口頭で指示を飛ばすことしかできない自分。
主人公の置かれたこのパラドクス的な状況。これはまさにSF的なものですが、ここでただのSFで終わらないのが菅浩江。
そこから一歩分け入り、「美」とはなにか、という、実に捉えにくい疑問に対するアプローチを試みています。これを煮詰めていったその先に『博物館惑星』があるのだな、と思いました。
……や、実際に作品が書かれ発表された順番は知りませんけど。


ああー上質。
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