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氷室冴子 / 集英社
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“男はすべからく泰然と構える”のが理想の俺なのに、体は小づくり、しかも女顔、とどめが名前で雨城なぎさ! 幼稚園で複数の男どもから求愛され、今は蕨第一中全校生徒からなぎさちゃん呼ばわりだ。その屈辱の過去の元凶北里と、ちゃん付けの張本人多恵子が俺に囁いた。三四郎が恋わずらい!? ──恋に、受験に、揺れる青春前期、肩肘つっぱらかったシャイボーイの、悪戦苦闘のラブコメディ!

氷室さんの少女小説を、というか、氷室さんの作品を読むのはずいぶん久しぶりでした。
なので、一ページ目の一文を読み始めた瞬間、なんとも言えない懐かしさがこみあげてきました。ああ、そうそう、氷室さんってこんな一人称書くんだった。なんだか一気に中学生時代に引き戻されたような気分になりました。

コバルト文庫ということで、もう、見間違えることのないくらい正真正銘の少女小説なのですが、読んでみてちょっと驚き。
あらすじからも分かる通り、主人公の雨城なぎさは“男らしい男”に憧れる少年。けれど、理想とはかけ離れた外見や名前にコンプレックスを抱いている。
これってば、ジェンダーがテーマなんじゃないかしら。
とは言え、少女小説に見せかけたジェンダー論でも、ジェンダー論を匂わせて背伸びをしている少女小説でもないところが、この作品の上手いところ。
両者がきちんと手と手を取り合って、青春小説になってるんだもんなぁ。流石です。

姉妹作である『多恵子ガール』への期待も高まろうかというものです。
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