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アーシュラ・K・ル=グウィン / 岩波書店
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アースシー世界では、島々の間に争いが絶えない。青年ゲドは、平和をもたらすエレス・アクベの腕環を求めてアチュアンの墓所へおもむき、暗黒の地下迷宮を守る巫女の少女アルハと出会う。

『影との戦い』では、少年ゲドの成長を描きました。
そしてこの『こわれた腕環』では、少女アルハの成長を描きます。
これは再三書きましたが、物語の基本とは、アイデンティティの喪失と獲得の過程そのものだと思っています。
「ゲド戦記」は?も?もまさにそのど真ん中、少年と少女がアイデンティティを一旦は喪失し、再び獲得する過程を描いたものだといえます。
まったく同じテーマを扱いながらも、描き方も物語の展開もまるっと変え、なおかつ心躍る冒険譚に仕立て上げるル=グィンの手腕には舌を巻きます。こりゃすごい。

テナーがアルハとなり、アルハが再びテナーとなる。
説話じみるでも論話じみるでもなく、きちんとファンタジーとして成立させて見せてくれるのだからたまらない。
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