アーシュラ・K・ル=グウィン / 岩波書店

大賢人ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。彼の国では魔法の力が衰え、人々は無気力になり、まるで国中が死の訪れを待っているようだと。ゲドはアレン王子を連れ、見えない敵を求めて旅に出る。
?『こわれた腕環』のところでも書きましたが、「ゲド」は物語の直球ど真ん中を突き進んでいきます。この?『さいはての島へ』も、まさにそれそのものでした。
今回はアレン王子がその主役。
そしておもしろいのは、少年アレンが大賢人ゲドに連れられ旅をすることで成長する物語であると同時に、大賢人ゲドが王・アレンを見出し自らの幕を引く物語でもあるということです。
少年の成長譚、もしくは、運命の子の物語というのはよく見かけますが、偉大なる主人公が幕を引くための物語、というのはあまり見ないような気がします。
それはこの作品のテーマとも密接に関わっているんだろうな、と思います。
世界の均衡。
バランス。
それが崩れたらすべてが終わりなのだ、とゲドは言います。
自然と文明の関係についての警鐘を云々とかはいまさらここで僕が書かなくても、もうすでに周知のことです。
それに加え、ゲドは自らの幕を引きアレンを玉座に据えることで、正常な代謝の有り様をも示しているのではないかな、と感じました。
それにしても、こうして改めて原作と比べてみると、ジブリの『ゲド戦記』がねぇ。
遠大な世界観を借り、上澄みだけを見目よく加工しただけにしか思えません。