新城カズマ / 早川書房

あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼馴染みの悠有は初めて時空を跳んだ──たった3秒だけ未来へ。<お山>のお嬢様学校に幽閉された響子の号令一下、コージンと涼とぼく、そして悠有の高校生5人組は、<時空間跳躍少女開発プロジェクト>を開始した。無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験に夢中になったあの夏──けれど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった。
内容としては最高。すばらしい青春小説です。
これは別にSFに限りませんが、非現実が作中に紛れ込むと、どうしてもその設定を書かないわけにはいかなくなります。
そしてそれがどんなにすばらしい設定であっても、引っ張られすぎると「なんだ、設定資料集かよ」的な作品になっちゃいます。
そしてその最初のハードルをクリアした後、こうした少年少女を主人公にした場合には、青春を手段にSFを描くのか、SFを手段に青春を描くのか、という問題が残ります。
この作品は後者で、SFが一つの設定としてきっちりと線引きされてます。
はやく後編の2巻が読みたいものです。
しかし、唯一の問題点、と言うか、人によっては気になるであろうのが文体。
少し斜め上から見下したようでいて、諧謔的な語り口。
僕は正直、鬱陶しくて嫌いな部類なのですが、内容のおもしろさに惹かれてなんとか読めました。これが青春小説でなくSF小説だったら読めていないだろうな、と、思います。