著:芝田勝茂 / あかね書房

聞こえる。胸の奥に響く、はるかなる時の恋歌。
図書館で物色していたとき、タイトルが気になって手に取りました。表紙を見てびっくり。佐竹美保さんじゃないですか! 中をめくってみてさらにびっくり。『更級日記』の竹芝伝説!
くらくらするほどの歓喜がわき上がりました。
竹芝、武蔵。その土地の性格、その土地に生きる人々。
みやこを捨てた王女、連れ出した青年。
否応なしに『薄紅天女』を思い出してしまいます。初めて読むのに懐かしい感じがするのもそのせいです。
でも、『薄紅天女』とは全くの別物ですよ。そこはきちんと言っとかないと。
『サラシナ』は帯にあるように恋物語でした。少女と青年の恋。許されざる恋。引き離されることが前提の恋。切ないです。
ただ、舞台設定が少々強引な気がします。
わざわざ時を超えさせる必要があったのだろうか、と。
はじめから竹芝伝説に的を絞って、そこだけを掘り下げてくれた方が読み応えが出たのでは、と思います。