西尾維新 / 講談社

映画を見に行くことになったのは妹が死んでしまったからだ。私は平素より視覚情報に関しては淡泊を貫く主義なので、映画を見るのは実に五年振りのこととなり、妹が死んだのも矢張り五年降りだった。回数を勘定すれば、共にこれが四回目である。私には合計で二十三人の妹があるけれど、死ぬのはいつも、十七番目の妹だった。
まず、箱入りの装丁に驚きます。取り出してみて、薄紙に包まれた本体に驚きます。中を開いてみて、まさに活字のような印刷に驚きます。そして読んでみて、その奇天烈さに驚きます。
なんだこれ。
箱庭のような不可思議な世界の中で、人形のようなキャラクタが動いています。
ところどころで童話や童謡、その他創作作品を想起させる表現が出てきます。僕は寡聞にしてわずかしか見出すことはできませんでしたが、見る人が見れば、おそらくこの作品は全編そうしたものがちりばめられた、さながらおもちゃ箱のような作品に見えるのではないか、と思います。
これは西尾維新が過去の先人に向けたオマージュとして書いたものではないでしょうかね。
いままでの西尾維新のどの作品とも毛色が違います。
まだ未読でこれから読もうと思っている人はちょっと気合いを入れて挑んだ方が良いと思われます。