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桜庭一樹 / 早川書房
bluesky.jpg
西暦1627年、ドイツ──魔女狩りの苛烈な嵐が吹き荒れるレンスの町で、10歳の少女マリーは<アンチ・キリスト>に出会った……。
西暦2025年、シンガポール──3Dアーティストの青年ディッキーは、ゴシックワールドの昏い眠りの中、絶滅したはずの“少女”というクリーチャーに出会う……。
そして、西暦2007年4月の日本。死にたくなるほどにきれいな空の下で……。
3つの箱庭と3つの青空、そして少女についての物語。


人間に対する一目惚れなんて、とてもじゃないけれど信じられませんが、本に対する一目惚れは確かに存在します。
書店でこの青一色の表紙、控えめに印字されたタイトルと作者名、そして帯に書かれた文句──「あたしは死んだ。この空の下で 少女という概念をめぐる3つの箱庭の物語」──を見たとき、考えるより先に手が出ていました。

物語を構成する上でSF的な設定はなかなかに魅力的でしたが、それはあくまでも設定にすぎません。この物語は、あらすじや帯にあるように、“少女”という存在について語られた物語でした。
中世。生きるために働かなくてはいけないその時代、子供はある日突然大人になります。子供と大人の中間地点、“少女”はそこには存在しないのです。
近未来。圧倒的な消費者としての“少女”は自らをも消費し尽くしてしまった。残されたのは大人になるのが早い女の人たちと、成熟しない男たち。青年。またもやそこには“少女”は存在しないのです。
そうした世界に、不意に現れる“少女”。
“少女”という概念。クリーチャー。
そして西暦2007年の日本、まだ“少女”というクリーチャーが当たり前のように存在していた時代へとすべてが集約します。

ページに文字を配置し、画面のように構成する。
目に飛び込んでくる文字は、情報を伝達する記号という意味だけではなく、それ自体がひとつのオブジェクトとして感性に訴えかけるものだと思いませんか。
ひらがなとカタカナと漢字。三種の文字の組み合わせで表せる日本語は、同じ文章を書いた場合でも、その組み合わせでいくらでも表情を変えます。
文字の使い方、という点に関しても、この本は非常にすばらしいものでした。
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