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伊藤計劃 / 角川書店

暗号名ソリッド・スネーク。悪魔の核兵器「メタルギア」を幾度となく破壊し、世界を破滅から救ってきた伝説の男の肉体は急速な老化に蝕まれていた。戦争もまた、ナノマシンとネットワークで管理・制御され、利潤追求の経済行為に変化した。中東、南米、東欧――見知らぬ戦場に老いたスネークは赴く。「全世界的な戦争状況」の実現という悪夢に囚われた宿命の兄弟リキッド・スネークを葬るため、そして自らの呪われた血を断つために。


伊藤計劃の作品ということでずいぶん前に買ってはいたのですが、なかなか手を出せずにいました。
というのも、この作品は「メタルギアソリッド 4」というゲームのノベライズだからです。
ゲームをやらないので「メタルギアソリッド」がどんな作品か知らないし、しかもいきなり「4」のノベライズって。
ちょっと躊躇してしまいます。
しかしいつまでも読まず嫌いでもいけませんしね。読んでみることにしました。

やっべえ。おもしろい。
伊藤計劃の描く戦場という世界。この作品で描かれているのは、いつもと変わらないそうした世界でした。なるほどどうして、小島秀夫作品から多大な影響を受け、二次創作を行っていたというんですから当たり前のことでしたね。
そういうわけで、ゲームのことをまったく知らない状態でも、すっと作品世界に入っていくことができました。


この作品で語られるのは、ソリッド・スネークと呼ばれる男の人生です。
それは銃と弾丸に彩られ、硝煙の香りに包まれた戦いの物語です。
そして、それはとりもなおさず、ソリッド・スネークという名のひとつの伝説でした。
しびれた。
正直、戦闘描写はところどころ「えー……」と思わずにはいられませんでしたし、登場するガジェットやシチュエーションが否が応にでも「ゲーム」を彷彿とさせました。
が。
そんなことはいいんです。
そうした部分をふっとばすだけのパワーと面白さがこの作品にはありました。

なんといっても、この作品を支えているのはその重厚なバックボーンでした。
これはこの「メタルギアソリッド4」に至るまで、いくつものゲーム作品として発表された「メタルギア」世界のストーリーでした。それが、実によくできている。エピソードとエピソードが絡み合い、矛盾なく「歴史」として織り上げられている。
そう、「歴史」と言い切ってしまえるほど、そこにはしっかりとした世界とエピソードがふんだんに用意されているのです。
それを、伊藤計劃は説明くさくも、そして押しつけがましくもなく見せてくれるのです。


この作品の主人公は傭兵であり、戦場でしか生きられない男であり、戦争についての物語です。
しかし、この作品に込められたメッセージは、「反戦・平和」でした。徹底して。
「伝説の傭兵」がこれまでどれだけ多くの命を奪い、そしてそのためにどれだけ多くの血を自ら流し、周囲の人間を巻き込み巻き込まれ、どれだけ多くの悲劇が生み出されてきたのか。
世界、そして歴史がきっちりと出来上がっており、それが確固としたバックボーンとしてあるおかげで、登場人物たちがより生き生きと描写されており、秀逸な人間ドラマが存在しています。
ひとりの人間が、人間らしく、しあわせに生きるには、戦争はいらないんです。平和な世の中が必要なんです。
ただただそのことがビンビンと伝わってきます。



やっぱり、伊藤計劃氏の夭折は、言葉では言い表せないくらいに無念で仕方ありません。
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