アーサー・C・クラーク / 早川書房

異星人の宇宙船が地球の主要都市上空に停滞してから五十年。その間、異星人は人類にその姿を見せることなく、見事に地球管理を行なった。だが、多くの謎があった。宇宙人の真の目的は? 人類の未来は?巨匠が異星人とのファースト・コンタクトによって新たな道を歩みはじめる人類の姿を描きあげた傑作!
個人的な感覚ですが、電子書籍にはSFがよく似合う。
しかも、最新作より古典がよく似合う。
なぜだろう。わかりません。でもよく似合う。
というわけで、早川のラインナップを漁り、この作品を選びました。
宇宙人とのファーストコンタクト、宇宙人による人類の管理、人類の最終進化、などなど、いまとなってみれば非常にありふれたSF要素ですが、この作品が書かれたのは60年前。
まさに原点、金字塔と呼ぶにふさわしい作品です。
この作品のもっとも素晴らしいところは、なんといってもクラークの卓見性にあります。
科学技術に対する深い造詣、社会や国家に対する予見性、そして人間に対する鋭すぎる観察眼。
宇宙人との接触、高度な科学技術による幸せな統治、訪れるユートピア。
当初はそれに反発しつつも、徐々に受け入れ、いつしか順応してしまう人類。そして社会。
この、架空であるはずの年代記が非常に秀逸です。
SF小説というか、ひとつの文明批評を読んでいるような気分を味わうことができます。
また、ラストシーンの美しさはまさに圧巻。
良い悪いではなく、ただただ想像するシーンが美しい。
やはり時代を超えて読み継がれるものは、それにふさわしい力がありますね。