ダイアナ・ウィン・ジョーンズ / 東京創元社

何か、おかしい。
壁にかかった懐かしい『火と毒人参』というこの写真も、愛読したベッドの上のこの本も、おぼえているのとはちがってる。まるで記憶が二重になってるみたい。
そう、ことの起こりはたしか十歳のとき。ハロウィーンだっていうのに、近くのお屋敷でお葬式があって、迷い込んだその席で出会ったのがリンさん。ひょろっとした背の高い男の人。ずっと年上なのになぜか仲良くなって、それから……なにかとても恐ろしいことが起こり始めた。(上巻)
なぜリンさんのことを忘れてしまったんだろう?
おばあちゃんに聞いても、親友だったはずのニーナに聞いても、だれもおぼえていない。
あのころポーリィが好きだったのは、自分じゃないなにかのつもりになるごっこ遊び。お葬式で出会ったばかりのリンさんは英雄タン・クール。ポーリィ自身は英雄助手。でも、二人の想像の中で英雄が住んでいた場所はほんとうにあった! しかもそこには二人のおはなしのほかの登場人物たちまで実在していた?(下巻)