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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ / 東京創元社
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何か、おかしい。
壁にかかった懐かしい『火と毒人参』というこの写真も、愛読したベッドの上のこの本も、おぼえているのとはちがってる。まるで記憶が二重になってるみたい。
そう、ことの起こりはたしか十歳のとき。ハロウィーンだっていうのに、近くのお屋敷でお葬式があって、迷い込んだその席で出会ったのがリンさん。ひょろっとした背の高い男の人。ずっと年上なのになぜか仲良くなって、それから……なにかとても恐ろしいことが起こり始めた。(上巻)

なぜリンさんのことを忘れてしまったんだろう?
おばあちゃんに聞いても、親友だったはずのニーナに聞いても、だれもおぼえていない。
あのころポーリィが好きだったのは、自分じゃないなにかのつもりになるごっこ遊び。お葬式で出会ったばかりのリンさんは英雄タン・クール。ポーリィ自身は英雄助手。でも、二人の想像の中で英雄が住んでいた場所はほんとうにあった! しかもそこには二人のおはなしのほかの登場人物たちまで実在していた?(下巻)


ハウルのおかげで、一時期本屋にダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品があふれていたじゃないですか。
あのときに書棚に居並ぶ作品群を見て、一番に目に留まったのがこの作品。だって、“九年目”の“魔法”ですよ。なんて魅力的。魔法使いが現れて呪文を唱えたり杖を振ったりするような即時的な魔法ではなく、時間の厚みを伴う魔法。タイトルだけでかなりぞくぞくきます。ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品を読むなら、とりあえずこれから、と心に決めていました。

読みました。
すげー。これ、すげー。
物語は、空想好きの少女が年の離れたチェリストの青年と運命的に出会い、さまざまな困難に見舞われながら成長する、というものでした。
問題のある家庭環境、大人のエゴに振り回されつつもすっくと伸びる少女の強さ、空想の懐の深さと豊かさなどを描いた成長譚であるのですが、それ以上に目につくのが「物語」の力。

この作品の中には、実に多くの物語が登場します。それはほとんどが名前だけの登場に過ぎないのですが、その数多くの物語が、その存在が伏線となって働くギミック。物語が物語の枠をはみ出て動き始めるトリック。語られ紡がれることで世界の豊穣さを提示し続けるリリック。

ここに提示される物語を、半分も知らないことが非常に悔やまれます……。
ここに登場する物語をすべて自分の血肉とした状態でこの物語を読むと、きっとたまらないのだろうな、と思います。
そういう意味で、非常に中毒性の高い物語でした。近くなくてもいい(というか、近くでは無理)将来、堂々とこの物語を再読したいな、と切実に思います。
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