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京極夏彦 / 講談社

 昭和二十八年春。小説家、関口巽の許に奇怪な取材依頼がもたらされた。伊豆山中の集落が住人ごと忽然と消え失せたのだという。調査に赴いた関口に郷土史家を名乗る和装の男が嘯く。――「この世には不思議でないものなどないのです」
 男が現出させたこの世のものとは思えぬ怪異。関口は異空間へと誘われてしまうのか? 六つの妖怪の物語で、「宴」の「支度」は整い、その結末は「始末」にて明らかにされる。

 昭和二十八年、裸女を殺害して、木に吊すという事件が蓮台寺温泉で発生。その犯人として逮捕されたのは、当時世間を騒がせた猟奇犯罪にことごとく関係者として連なっている作家、関口巽だった。関口は言う。「多分僕がやった。僕が木に吊して逃げるところを自分で見ていたのだから」――とまどう捜査陣。事態を混乱させるがごとく、街に溢れる奇怪なる宗教集団。「宴」の始末はいよいよ本書にて明らかになる!


乱痴気騒ぎ。
この作品を評するのに、これほどぴったり来る言葉はありません。そう、まさに宴。どんちゃん騒ぎでもうなんでもありの大宴会でした。

『支度』は6編の物語による短編集です。それぞれ別々のお話であるようでいながら、登場人物が重複しており、関連性が見え隠れします。が、同じ人物が、あるお話では善人なのに、別のお話では悪人になる。あるお話での悪人が別のお話では善人となる。被害者が加害者となり、加害者が被害者となる。それぞれのお話はそれぞれで完結し、個々に見れば矛盾はない。けれど全体を見ようとするとさっぱりわからない。
一体なにが起こっているのか。
一体誰がどんな人物なのか。
さっぱりわからない。
このシリーズの見所はやはり京極堂の長広舌による憑物落しなので、いい加減すっきりさせてくれ!と思うんですが、ただただ登場人物たちが場を変え役割を変え右往左往するまま『支度』は完了してしまいます。

そして続きは『始末』にて。

こちらは短編集ではなく長編となっており、『支度』では出番の少なかった京極堂を中心としてお話が進みます。『支度』で描かれた事件の裏で何が起こっていたのか、語られるエピソードがそれぞれのお話の隙間を埋めていきます。
今回の事件はおよそ信じられないような規模で行われている「ゲーム」であり、その「ゲーム」が機能している間は巻き込まれた人々に危害が加わる心配はない、と京極堂は自らが動くことを渋ります。
ここで自分が動いたら、その見せしめとして起こるはずのなかった被害が起こってしまう、と。
織作茜絞殺事件及び関口巽逮捕がまさにそれだ、というわけです。
手の内にカードがありながらもそれを切ることのできない京極堂、それを周りで眺めながらやきもきする鳥口・益田・青木。という構図の中、実は「ゲーム」が破たんしていることに益田が気づいてしまいます。
そこでようやく京極堂が重い腰を上げることになります。
いや、もう、ね、状況がさっぱりわからない中ひたすら「おあずけ」を食らっていたこちらとしては、ようやくかよ! 遅いよ! と叫びたかったです。
そしてそこからの急展開。
京極堂が語る語る。
めちゃくちゃにとっちらかされた状況が、言葉によって整理され整頓され、パズルのピースがはまるごとく、細切れにされた事実がはまるところにぴったりはまっていき、最終的にはどこにも不思議のない、辻褄の合った状態になってしまいます。
何作読んでも、何度読んでも、本当にこれが快感。途中まだるっこしすぎて何度か挫折しそうになりますが、この快感を味わうためにがんばる、みたいな部分がありますね。京極作品には。


しかし……。
今作は、ちょっと、というか、はっきり言って反則だと思います。
記憶の捏造、改竄、消去が自由自在で、行動もばっちり操れるだなんて。
これが通るんならもうなんでもありすぎて、探偵役が事件を解くことなんて不可能ですよ。
今回は事件の概要というか全貌と、そうした手口を使うということを京極堂が知っていたからこそ解決できたものの。
ここまでやっちゃって、果たして次からどうするのかな、と、そこはかとない不安を覚えつつ、ようやくのことで「宴」は終了したのでした。
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