村山由佳 / 集英社

そのひとの横顔はあまりにも清冽で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない──。
村山由佳のデビュー作です。
切ないです。が、もう少し書き込みがあれば良かったのになぁ、と思うのも事実です。
アレですよ。
あぁ、これが書きたかったんだなぁ、というのがよく分かります。というか、分かりやすすぎです。
春妃と歩太の恋愛の過程とか、夏姫との確執──というか、夏姫を間に挟んだことで生じる葛藤とか、年齢と立場の違いに悩む二人とか、を書き込んで欲しかったかな。
崩壊と再生、それはいいんです。
すっげえ切ないですもん。オチもその後(『天使の梯子』)も全部知ってても、やっぱりラストは涙涙です。苦しくて喘ぎましたよ。人前でしたけど。
村山由佳作品の中で、これは一番映像化して欲しくない作品No.1です。
映像にされると絶対に冷めます。
文章だから表せる希望と絶望に満ちた切なさ。
そんな作品です。