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小林泰三 / 早川書房

頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てに彷徨う「落穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける――。


SF熱が高まったのに乗じて、つい買っちゃった。
短編ではなかなか絶望的な状況で、全然やさしくない結末だったようなおぼろげな記憶がありました。が、細かいところはさっぱり忘れているので、新鮮な気持ちで読めました。

舞台は、「天」に地面があり、「地」に遙か深遠なる宇宙が広がる世界――つまり、我々のいるこの世界の重力が逆転した世界。
少しでも気を抜くと「何もかもが空に向かって無限に落下していく」という恐ろしい世界で、人間は失われた古代超科学の遺産を使い、かろうじて生き延びている状況。

物語開始早々、なかなかハードです。

なにがハードって、まず、この世界設定が明らかに人類の生存に適していないってことと、ゆるやかに滅びに向かっているという事実。絶望的な状況下でいかに生き延びるのか。その先に希望はあるのか。という重厚な物語の予感がします。

そして登場人物皆がすごい博識。この世界で生き延びるためには物理の知識が必須――というか、知識がない、きちんと計算ができないということは、即、死に直結するんだから、当然と言えば当然です。つまり、「この世界で生き延びるということがいかに難しいことなのか」が、物理的知識や数学を通じて微に入り細をうがち語られるわけです。

そんなこんなで第一章は非常に楽しく読んだんですが……。
第二章からいきなり怪獣大決戦。
あれ? なんか楽しみにしていたのとは方向性が違う……。
そして第三章に突入し、若干怪獣大決戦のテイストが抜けたとはいえ、大筋は変わらず。
いやしかしきっとこのままでは終わらないはず、と期待するも、最後の最後は丸投げ放置。
えー、短編のオチならそれでいいけれど、文庫本丸々一冊使ってあのオチはいかがなもんだろうか。余韻を残すラスト、とはとても言い難く、「あれ、これってナンバリングタイトルだっけ?」と思わず表紙を見返してしまいます。
この作品と「囚人の両刀論法」をつなぐ物語がほしい。ほしいよー!


というわけで、一編の長編として見るとなんだか残念な作品でしたが、ところどころに差し挟まれる登場人物たちの過去話、これが実に秀逸で。
各エピソードが実によくできていて、そこだけを切り取って短編集にすればいいのに、と思いました。特に主要登場人物の一人、ナタのエピソードはすごい。圧倒的。もう、いろんな意味で息が詰まる。

あぁー、しかし、SFを読みたいという気持ちがなんだか不完全燃焼気味。
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