荒俣宏 / 角川書店
ずいぶん久しぶりに読みました。荒俣宏の一大オカルト伝奇。
明治から昭和73年に至るまでの約100年の物語。
明治・大正、戦前、戦後、未来と四つに区切ることができますが、何度読んでも最初期の明治・大正編がおもしろい。巻数でいうと、1~4巻。特に4巻のクライマックスの盛り上がりは尋常ではなく、もう、この作品の一番の見どころだと言えると思います。
正直なところ、この明治・大正編で終わってしまってもよかったのではないかと思います。
第5巻で加藤保憲が出てこないのには拍子抜けさせられるし、戦中がぽっかりと抜けいきなり戦後となり、何の前触れもなく戻ってくるのも唐突にすぎます。まぁ、のちに戦争編は書かれましたけど……。
めくるめくような魔術戦もどんどん鳴りをひそめていきますし、作中に登場する実在人物も(インパクトやキャラが)弱くなる一方。
どうしてもかつての勢いや興奮を取り戻せないまま物語は進んでいきます。
でも、未来編でコンピュータと古い魔術が融合して新しい魔術として描かれるのはとてもいい。そうした部分にわくわくさせられながらも、結局最後は古い血筋や家系、古い魔術のぶつかり合いになってしまうのが残念でした。
けれど、この作品を読むと「東京」という街に行きたくなります。好きな街ではないにもかかわらず。なんだかんだ文句言っても、こう思ってしまうということが、この作品の魅力を端的に表しています。