西尾維新 / 講談社
すべてを失った十三歳の少年、空々空。
感情を持たず、感性に欠けるがゆえに
ヒーローであることを強いられる、
地球撲滅群第九機動室室長。
彼のもとに届いた悲痛なる事件の報せは、
地球からの新たなる攻撃なのか?
真相を探る英雄の前に立ちはだかるは……、魔法少女!?
悲鳴から始まる英雄譚、第二弾。
『ネコソギラジカル』以来、本当にひさしぶりに楽しみに待っていた西尾維新新作は、やはり西尾維新でした。
前作の『悲鳴伝』がとても良くまとまっていたので、今回もそうした作品を期待していたのですが。
残念ながら、なんと続きます。新書で500ページ強も費やして、序章しか書いてないってどういうことだ。
いくら冗長で回りくどく言葉遊びという名の引き延ばしが持ち味とはいえ、冗長すぎるにもほどがある。
巻末の予告を見ると、なんとこれらは「<伝説>シリーズ」と銘打たれ、今年中にもう3冊(6月、9月、12月)刊行されるそうです。
なんだかなぁ。
こんなことになるんなら、『悲鳴伝』だけですぱっと終わっていて欲しかったと思うのは天邪鬼でしょうか。
まぁ、それはともかく。
今回は魔法少女ものということで、もしかしてもしかすると……と淡い期待を抱いていましたが、残念ながら『りすか』とは何の関係もないみたいです。いろいろ精力的なのはいいけれど、早く『りすか』の続きを書いてほしいものです。
また話がずれた。
そう、今回は魔法少女ものでした。
前回がヒーローものでしたから、日曜朝8時的には順当な流れのような気もしますが、読んでみると違和感が大きかったです。
作中でクラークの三法則のひとつ「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」を引用しつつも、そうではない、と何度か釘を刺しているように、どうもこの「魔法」は地球撲滅軍の使用する高度な科学技術とはまったく一線を画す、正真正銘の「魔法」のようです。
しかし、最初に述べたようにこの『悲痛伝』はこれだけの長さを以てしても、いまだ序章。物語は何一つとして動いておらず、「魔法」とは一体なんなのか、まったく明かされていません。
しかし、ここに登場する技術が「科学ではなく、魔法」であることには大きな意味があるぞ、ということだけはぷんぷんと匂わせて――というか、直接そうした記述もあるくらいなので、ここが物語上のポイントであることは間違いないのですが……。
ものすごい消化不良感。
なんだか『エヴァQ』を思い出しました。
それっぽい用語と意味深な台詞回しと超展開で振り回し、本命は次回、乞うご期待! みたいな。
『悲鳴伝』は少年と少女の物語で、セカイ系を皮肉ったつくりだと以前感想に書きました。
セカイ系、つまりはきみとぼくの物語というわけで、それは言い換えるとボーイ・ミーツ・ガールだということです。
だからこそ、あの終わり方で納得もできたんですが……。
今作は、魔法少女たちが登場します。
魔法少女じゃなくて、魔法少女たち。つまり、ボーイ・ミーツ・ガールズ。
そして出会った端から死んでいく。
これはハーレムものにたいするアンチテーゼなんだろうか、と良い風に解釈することもできますが、果たして。
完結、というか、せめてこのエピソードが一段落つくまではあれこれ言いにくいです。6月に出るという『悲惨伝』で四国編が終わるのか、それとも残り3冊すべてが四国編に費やされるのか。
全体的な評価は、またそのときに。