篠崎紘一 / 新人物往来社

弥生時代末期
邪馬台国、卑弥呼の宗女台与が産んだ子は神の子か、それとも人の子か。
我が子を殺せ、と神に命じられる台与。激突する大和、筑紫の二つの邪馬台国。死力を尽くして戦うシャーマンたち。
『日輪の神女』の続編。前作からだいたい7〜8年後が舞台となります。
主要登場人物はほぼ変わらず。
台与が一人前の神女となるまでを背景に、弥生時代の豊かな精神世界と文化を描ききったのが前作でしたが、今作はその構図が逆転します。
あの時代の文化や精神世界を背景とする代わりに、今度はドラマが前面に押し出される作りとなっています。
ただ一途に神を信じ、神女であることを疑わなかった台与ですが、我が子を殺せという神の言葉に疑念を抱きます。
神とはなんなのか。神女とはなんなのか。
それを軸に、台与の周囲の人々も悩み、苦しみます。
怪我のせいで足を不自由にし、戦にも立てず子も成せない首長。女として生まれながら、子を持てない首長の妻。神の言葉を聞き分ける審神者でありながら、斎主の影に甘んじるしかない女。戦の傷がもとで長い間正気を失っていた男。
それぞれが悩み、苦しみ、そして己とは何者なのか、という問いに対する答えを見つけていきます。
前作とはうって変わってドラマ色濃厚となっていて、うれしい誤算でした。