舞城王太郎 / 新潮社

部屋に現れた黒い影。
屋根裏に広がる闇の穴。
正体不明の真っ暗坊主。
そして私は存在しない存在。
あなたを見つめていることしかできない。
最愛の人がこんなに近くにいたことに気づいたのは、すべてが無くなるほんの一瞬前だった……。
舞城だなぁ。
いかにも舞城らしく舞城王太郎にしか書けない物語でした。
主人公と語り手は別人(?)で、主人公が人間であることは間違いないんですが、語り手が何者であるのかは明かされません。
とりあえずはじめはこれは誰なんだというかなんなんだという疑問が頭の片隅にあるんですが、読み進めるうちにどうでもよくなってきます。
や、どうでもいいというか。
なんとなく「そんなもんなんだ」と納得してしまうというか。
つまりは舞城王太郎の勢いにしっかりと引っ張られ乗せられてしまうのですね。
物語は3部構成で、すべてに共通して出てくるのは黒い影/闇の穴/真っ黒坊主で、主人公がいかにしてこいつと戦うのか、が物語の肝となります。
戦うといっても、わかりやすくバトルするというわけではなく、各々の人生をかけて各々の生き様を通してお前を否定してやる、みたいな、そんな感じの戦いです。
1、2部では惜敗を喫し、ついに3部でかろうじての勝利をおさめます。
が、苦い……。
非常に苦々しい勝利で、爽快感なんかはまったくありません。
それでも、目には見えないけれど厳然としてそこにある悪意、人間がいる限り決してなくならないどす黒いなにかに対して一矢報いたという事実が、一筋の光明のように胸にしみてきます。
一見すると無茶苦茶なようで、読み終えると深く納得している。
舞城王太郎の魅力は、やはりこの無茶苦茶さですね。