作:ひょうた 演出:中津留章仁

大好きな映画配給会社への再就職が決まったアラフォーの独身女性。
そんなある日、付き合っている彼からプロポーズを受ける。
仕事と恋愛、そして人生と格闘する一人の女性。
木村多江が仕事と恋愛の狭間に揺れる等身大の女性を演じます。
物語はあらすじのとおりであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
びっくりするくらいベタな物語。
いや、別にベタが悪いわけじゃありませんよ? ベタってことは、それだけ数多く描かれてきたということであり、それだけ数多く描かれるにはそれなりの理由が(もしくは力が)あるということですし。
しかし今回の脚本はそのベタな物語を実に平坦に、なんの起伏もひねりもなく直球ど真ん中で放ってきており、はっきり言って「おもしろい」とは言い難かったです。
これが普通の芝居なら耐えられない1時間40分でしたが、今回はひとり芝居。
ひとり芝居は「演技」に加え、どうしても「語り」のスキルが必要になってきます。なんてったって舞台には一人っきりしかいませんからね。普通に演技していたんじゃ厳しいことは明白です。
しかし「語り」があまりにも達者すぎると芝居というよりは講談、もしくは落語になってしまいますから、ひとり芝居を作る上ではそこら辺のさじ加減が非常に難しいのではないかと思います。
今回の舞台は木村多江の演技力の方に重きを置いた作りとなっていて、主人公以外の人物を透明人間として扱う、という手法をとっています。
だからこそ脚本がこんな感じになったのかな、と。
余計なことは一切せず、ただただ純粋に木村多江独演の魅力を見せつけようとして。
物語としては微妙だけれども、木村多江ワンマンショーとしては非常に魅力的になっていました。かわいい。うん。かわいかったなぁ。
主人公はとってもめんどくさい、いわゆるイタい女なわけですが、これが徐々にかわいく見えてきてしまう不思議。イタい部分は最初から最後まで変わらないんだけど、最後にはなぜかちょっとほっこりしてしまう。というかさせられてしまう。
木村多江の魅力を存分に満喫するには最高の舞台でした。