斉藤洋 / 偕成社

白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになった狐、白狐魔丸の人間探求の物語。元の襲来寺に、天の「気」をうごかし嵐をおこした白狐魔丸。こんどの活躍は、五十一年後、時は室町時代初期。楠木正成という武将と出会う。
この「白狐魔記」シリーズ、この三巻を読むために読み始めたのだと言って過言はありません。これが読みたかったんです。だって、楠木正成ですよ?
何年時が経とうとも、人間は変わりません。
相も変わらず人間同士で争い、手に収まりきらぬもののために血を流すのです。
白狐魔丸もこのころになると、ある程度の諦念が生まれています。
そんな中、登場です。楠木正成。
僕の中の楠木正成像とはちょっと違うけれど、これはこれでいいかも。
ぱっと見には戦いに挑むスタンスがまるっきり違うような気がしないでもないですが、それは仕方がないこと。
どこに視点を据え、誰に重点を置き、なにに焦点を当てるのか。
それで、まったく同じ事柄を見ていても、まったく違ったものが見えてきたりするものです。そうした意味で考えれば、ここで描かれる楠木正成は、やはりまごうことなき楠木正成だった、と思います。
はぁ、かっこいい。
楠木正成見れたからもういいかな、と少し思うけど、ここまできたらせっかくだし次も読もうかな。