斉藤洋 / 偕成社

白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになった狐、白狐魔丸の人間探求の物語。「源平の戦い」のあとの長い眠りから、狐がめざめたところから、本書ははじまる。時は鎌倉時代。北条時宗が執権となり、日蓮は国を憂い、いまや、元の大群がおしよせようとしていた。
源平の戦いから85年。
長い眠りから覚めた白狐魔丸は、再び人里へと降りていきます。
相も変わらず人間は訳分かりません。摩訶不思議な生き物ですね。
そして、今回も兄弟喧嘩に巻き込まれます。北条時宗と、時輔。どうして人間ってこうなんでしょうね。手に収まりきらないものを欲するのは、人間の性ですか。バカな生き物です。
そして、竹崎季長。この人が来ましたか。
竹崎季長といえば、言わずと知れた「蒙古襲来絵詞」。彼は作中で言っています。
「拙者のような身分では、いくら敵の首を取っても、のちの世に名がのこるかどうかわからぬ。だが、絵はのこる。拙者は絵で名をのこす」
こうした考え方を持っていても、季長はやはり鎌倉武士です。領地こそ武士の命と言い放ち、領地を取り戻すために必死に軍功を立てようと躍起になります。
白狐魔丸はそれを滑稽に思いはしても、理解できません。
結局、人間は人間なのですね。