忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

江國香織 / 文藝春秋
akai.jpg
二人なのに一人ぼっち、ただふわふわと漂っている。寄る辺もなく。
結婚して十年、幸福と呼びたいくらいな愉快さとうすら寒いかなしみ、安心でさびしく、所在なく……。日々たゆたう心の動きをとらえた怖いくらいに美しい、連作短編小説集。



たとえば、登場人物の感情をそのまま単語にしたんじゃしょうがない。
「●●はうれしかった。」とか、「△△は深い悲しみにおそわれた。」とか。
うれしいんなら笑わせるとか、口調を軽くするとか。悲しいんなら泣かせるとか、ため息をつかせるとか。登場人物の行動や言動、ちょっとした仕草や雰囲気で感情を匂わせる。
そういうのが、文章の醍醐味って奴だと思うんです。

江國さんの文章を、そこに紡がれる物語を読んで、そっくりそのまま、そこにあるだけの意味でのみ捉えると、わけ分かんないんだろうなぁと思います。行間をどれだけ感じ取れるか、が、決め手じゃないかと。

主人公の夫、実に不思議な生態の奇妙な生き物に見えます。
読んでいる間はすさまじく違和感を感じるのですが、ページを閉じ、女性視点から現実の世界に帰ってくると──いままで感じていた違和感がすーっと溶けていきます。
不思議でもなんでもない、ただの男。
でも、またページを開くと同じ感覚に囚われます。
それは、江國さんの作品というのは、純度100%の女性視点による女性感覚なのだからではないかと思います。
理屈ではなく、感覚。
感じる、ということ。

ようやく、僕がなんで江國さんの作品を好きなのかがつかめた気分。感覚なんで、言葉にすると逃げてしまうけれど。
この記事にコメントする
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (チェックを入れると管理人だけに表示できます)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
PR
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
Copyright ©   input   All Rights Reserved
Design by MMIT simple_plain Powered by NINJA TOOLS
忍者ブログ [PR]