江國香織 / 小学館

彼らを知っている女たちの意見を総合すれば、恰好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟二人で住んでるのが変、スーパーで夕方の五十円引きを待ち構えて買いそう、そもそも範疇外、ありえない、いい人かもしれないけれど、恋愛関係には絶対ならない、男たちなのだ。
まぁそんな感じで江國香織の新刊です。
それも主人公が男(!)、しかも二人です。
間宮兄弟と、その周辺を行き交う数人の女達の物語。
基本的に兄弟は自分の世界を持っていて、二人の生活を持っています。
それはとても完全で、付けいる隙がありません。
閉じた世界。
そこに、彼らが思いを寄せる女が現れることで、完璧だった秩序も静寂もなにもかもが吹っ飛んでしまいます。
どこかおかしく、切なく、親しみのあふれるお話で、本を閉じてから感じたのは、すごく薄く引き延ばされた淋しさと幸福感でした。
江國さんの描く物語は、いつも一抹の淋しさと幸福感にまみれているものばかりでしたが、今回は、それが薄かったのです。
それはきっと、「恰好わるくて、気持ちわるくて、おたくっぽくて、むさくるしくて、いい人かもしれないけれど、恋愛関係には絶対ならない」間宮兄弟と自分が似ている、と感じられたからかもしれません。
兄弟がいないことを、はじめて少し淋しく思いました。
同性のきょうだいというのは、どれほど親しく、どれほど遠いものなんだろう。