元長柾木 / 角川書店

「よし、あの娘、拉致監禁しちゃおう」
少女達の人生に介入し、強引に支配下に置こうとするブッとび女・飛鳥井全死。理不尽な干渉の末、攻略される少女たち──これは悩める自我を救済する“福音”かそれとも“ただのおせっかい”か──!?
あらすじといい表紙といい、非常にイタイ作品を期待していたのですが。
期待はずれでした。
大きなバックボーンがあることは分かるのですが、独りよがり的傾向が強いことは否めません。はっきり言えばワケ分んねえよ。
キャラの人間離れした名前や、特殊な能力が乱舞するところ、大仰な二つ名を持っているところ──西尾維新の模倣に見えてしまいます。それでも、西尾維新を読んでいて感じるおもしろさが、こちらにはない。
どこまで情報を出して、どこまで描写するのか。どこに線引きをして、誰をそこに立たせるのか。
西尾維新はそうしたバランス感覚が絶妙で、ちょっぴりくらい設定がワケ分かんなくても読ませてしまう力があります。
でも、これには、そこまでの力がない。残念。
自分としては、こう、「電波女が全速力で突っ走って、少女たちを理不尽に現実に突き落とし攻略していく」みたいな、「なにやってんだよ、これが現実だよオニイチャン。モニタの前を離れて街に出ろよ!」的なギャルゲーを鼻で嘲笑うような作品だと思っていたもので。
なんだかがっくりきてしまいました。