森絵都 / 講談社

日本ではまだマイナースポーツの水泳競技≪飛び込み≫。学園生活を送りながらダイビングクラブに通い、オリンピックをめざしはじめた少年ダイバーたちをドラマチックに描く!
わずか1.4秒の空中演技。高さ10メートルの飛込み台から、時速60キロでDIVE!!
飛び込みなんて見たことないですよ。
つーか、スポーツ自体好きじゃないんで。オリンピックもワールドカップも興味がなくて、むしろその時期はテレビがそれ一色なのでむかつくぐらいなんです。つまんないよ。
だから、スポーツもの、しかも飛び込みなんて読めるのかしら、とちょっと不安でした。
が。
杞憂も杞憂。そのおもしろさにあっという間にのめり込んでしまいました。
飛び込みのことをなにも知らなくても充分読めます。説明くさいところが多いわけでもないんですけどね。的確にポイントを押さえてくれるので迷わずに済むんです。
スポ根といえば、挫折・努力・友情・勝利、みたいなのが定番じゃないですか。
この作品も、おそらくはそうした流れに則っていくとは思うんですが。
野球やサッカーのようなスポーツはチームプレイじゃないですか。だから、こう、みんなでがんばろう、みんながひとつになるっていいよね、みたいな描き方をされることが多い。
でも、飛び込みは個人競技。
個人競技だからこそ、挫折を味わうのも自分一人、それを克服するのも自分一人。努力するのも自分一人、成功を収めるのも自分一人。
スポーツに打ち込み、一喜一憂することすべてが、自分を見つめることにつながっている。
この違いは大きいですね。
すごく真っ当な青春小説です。読んでいて、たまに赤面してしまうくらいに。
飛び込みを一度見てみたくなりました。
ただでさえ少ない機会も、これからの季節を考えるともっと少なくなるんでしょうけど。