作・演出:倉本聰 / 富良野塾
人里離れた山の飯場に、6人の労働者と賄婦レオ。
突然の雪崩で閉ざされてしまったその飯場に、突如UFOが着陸し、女性の宇宙人φ(フィー)とμ(ミュー)が下り立つ。驚愕の中でコミュニケーションをとる7人に、φとμは自分たちの星が12億年前、環境破壊によって滅び、今は帰る故郷もなく只宇宙をさまよっていることを語る。彼女たちはUFOの動力であるきれいな水を求め、豊かに水のある地球に下りたった。ところが現実に見た地球の水は―─。
倉元聰といえば、言わずとしれた『北の国から』。
でも、あれって、ドラマを見るようになったときにはすでに作品が先行していて、とても追いかけて見る気にはなれませんでした。漏れ聞くあらすじやパロディを見たイメージとして、とても重くてどんよりとしたものを持っていましたし。
その倉元聰率いる富良野塾公演。
一体どんな舞台になるのか想像もつかず、とても楽しみでした。
結果から言えば、想像以上に楽しめた、といったところでしょうか。
危惧していたどんよりイメージを払拭するに十分なほどのユーモアに満ち、役者さんの動きも軽快でした。演技も上手いし、なによりあの舞台装置! あんまり静かで滑らかに動くものだから、人が入って動かしてたりして。いやいやまさかな。と思って見ていたら、本当に人が入っていてびっくりしますた。
あらすじを読めば一目瞭然ですが、この作品の大きなテーマのひとつに「自然との共生」が上げられます。
環境破壊によって母星を失った宇宙人。彼女たちは、地球の大気もミネラルウォーターも山からの湧き水も人体さえもが汚染されきっていると言います。そして人類へと警鐘を鳴らすのです。
そして、もうひとつのテーマが「故郷」でした。
故郷を持たない人間、故郷を持ちながら帰れない人間、故郷を捨てようとする人間、故郷を失った宇宙人。
それぞれが思い描く故郷の姿、故郷に対する思い。
しんしんと降る雪のように、胸に積もっていくものがありました。
この作品のラストを見て、すっごいびびっと来ました。
故郷を求めて旅立つ女と、故郷を捨てきれず旅立てなかった男。このふたりがすれ違い、出会うことなく物語は終わってしまいます。
ここで出会ってしまう方が、ドラマ的には強いです。でも、このふたりはすれ違うのです。出会うことはないのです。故郷を持たない人間はそれを探し求め、故郷を持っている人間はそこに還る。
まず、テーマありき。
その描き方には好感が持てます。
『北の国から』見てみようかなー。
DVD借りようと思ったらどれだけかかるのだろう。時間もお金も。
それを考えるとちょっと挫けそうになりますが、そこをなんとかがんばろうと思わせるだけの力がある舞台でした。