森絵都 / 講談社

自分らしい飛込みをさがしはじめる少年たち
スーパーダイブに挑む知季、荒海に飛びこむ飛沫、完璧主義の要一……。それぞれに大きな転機が待ち受ける。
ただ飛ぶだけの シンプルな演技だからこそ どんなごまかしも通用しない
舞い上がる白鳥のようなスワンダイブ
第一巻が知季を中心に据えたお話であったように、第二巻は飛沫を中心に据えたお話でした。
幻の天才ダイバー、沖津白波の孫。
ジジイは飛込みによって不遇の人生を強いられたのだ、と、頑なにその呪縛に囚われ、プールでの飛込みを嫌い、“契約”のためにしか飛ぼうとしなかった飛沫。
その飛沫が、初めて踏む決戦の場。
そしてそこで、飛沫はライバルと競い合う楽しさを、観衆の目を釘付けにする快感を知るのです。
はじめて、自分のために飛んでみたいと思うようになるのです。
しかし、その飛沫の前に大きな壁が立ちふさがります。
それを目の当たりにして混乱した飛沫は一度故郷の津軽に逃げ帰ります。
そしてそして。
『おれはあそこに、東京に帰るのだと実感した。
自分の意志で。
たぶん、負けるために。』
飛沫は飛込みを続けるために東京に帰ることを決意しますが、そのときの心情がこれですよ。
この文章を読んだとき、身体がぶるっと震えました。
こんな決断、なかなか下せるもんじゃないですよ? しかも、スポーツの世界ですよ? ただの高校生ですよ?
飛沫がこの結論に達するまでを、じっくり一冊使って見せつけられました。
悩み苦しんだ末に見えてくるもの、というのは、意外とシンプルなのかもしれませんね。