森絵都 / 講談社

限界──。その、さらに一歩 むこうへ!
少年たちの思いもおかまいなしに、大人の世界は動いていた。夢はこんな形で閉ざされてしまうのか……。
そして第三巻。今度は要一のお話です。
飛込みオリンピック元代表の父と母を持つ、飛込みのサラブレッド。
血筋にあぐらをかくことなく、日々血のにじむような努力を常に続けてきた天才児。
長年の夢だったオリンピック代表の座が、その手の中に転がり落ちてきたのに、要一は納得できませんでした。
代表選考会もなく、密室で決定された不可解な決定。
自分の意志で飛込みにすべてを賭けている仲間たちとは裏腹に、自分は誰かの用意したレールを走らされている──。
『ここが、と要一はふいに大声を張り上げ、自分の胸ぐらを握りしめた。
「熱くならないんです」』
飛込みを自分のものにするために。自分の夢を自分の手でつかみとり、自分のための戦いにするために。
要一は決断を下します。
その青臭さといったら、もう、たまったものではありませんが、むせかえるようなその香気を行間から感じると、胸のどきどきが止まらなくなります。
ただひたすらにまっすぐで、それが故に純粋。
自分には無かったものだから、ものすごく惹かれてしまったんでしょう。
ページを繰る手が止められませんでしたよ。