森絵都 / 講談社

この一瞬は、今、君たちの永遠になる。
自分の枠を超えた知季、秘密の特訓を終えた飛沫、ついに本気になった要一。オリンピック出場代表権をめぐって、少年たちの熱い物語はいよいよクライマックスに!
地を離れ、 宙を求めて、 水へ還る。
第四巻にして最終巻の今巻は、章毎が、それぞれのキャラクターのお話となって綴られています。
ついにやってきたオリンピック代表選考会なのですから、当然、各人の飛込みの様子が描かれるものだとばかり思っていました。
実況、というか、少し解説じみた文章で、少年たちのすべてを賭けた最後の戦いを描写してくるんだと思っていたんですよ。
ところが。
そんな描写はほとんどありません。
みんなそれぞれの思い。そこにきちんと焦点を当てて、丁寧に描写してあるのです。
かといって、飛込みがおざなりにされているのかというと、それはとんでもなく。
最後の最後まで、ばっちりと緊張感は持続しますし、ラストにかけての盛り上がりは最高です。
飛込みというスポーツのおもしろさと、少年たちの繊細な思いを、どっちが上でも下でもなく、まったく同じ土俵で描ききってしまうのです。
おもしろすぎる。感動すら突き抜けて、ただただ平伏するばかりです。
飛込みという競技を通して成長していく少年たちの物語も、これでいったん終わりです。
たった四冊で終わってしまうのがもったいなくて仕様がない……もっともっと、いつまでも読んでいたい。
読後の爽快感と充実感にまみれながら、いまは、ただただひたすらに幸福です。