原作:小寺和平 構成・演出:山元清多 / 劇団黒テント

時は1960年6月。
名曲喫茶「ど」に集まった3人の吃音青年が日頃の体験を語り合う。
汗と屈辱にまみれた苦難の吃音体験談集。
「ど、ど、ど、どうするって──ど、ど、どうしよう」
なんと全国40公演(!)のうち、金沢は二番手。
さすがプロはひと味違います。
前説から本編への移行が非常にスムーズ。ていうか、区切りがない。あっと思う間もなく引き込まれているんですね。
最初のつかみも上々で、すっと見ていけました。
また、演出に隙がない。
かっちりしている、というとなんだか微妙な誤解が起きそうですが、なんていうのかな、淀みがない、というのか。
そして、吃音者が主人公なのでまともにいけば台詞は極端に少なくなってしまいます。
しかし、これがまたよくしゃべる。
いわゆる地の文、ナレーションの部分なのですが、これを舞台上の役者さんが怒濤のようにしゃべるのです。
ついさっきまで吃音のために言葉が出てこずに必死の形相だった役者さんが、すらすらと台詞を話す。なるほど、その演出はおもしろい。そして、台詞の洪水にもかかわらず、うるささを感じない。
しゃべりの歯切れの良さがあるのは当然なのですが、役者同士のテンポが非常に良い。なので、台詞の量の割に、すごくすっきりとまとまっている印象を受けます。
でも……個人的に、こういうのはあんまり好きじゃありません。
これは別に芝居に限らないのですが、僕は、見せることで魅せられる、というのが大好きなのです。
口にする台詞の裏側、ちょっとした仕草、まとった雰囲気、そうしたものを見せることで、多くのものをこちらに伝えて欲しいのです。
上手いことは間違いないのですが、いまいち好きになりきれない舞台でした。