作:清水邦夫 / Agクルー

ちょっと時代遅れの女優二人が出番を待つ楽屋。そこに「かもめ」の主演女優や枕を抱えた謎の若い女優が次々と出入りし、笑いと怒りと悲しみの中に繰り広げられるドラマ。マクベス・切られの仙太などおなじみの台詞も次々に登場する、楽しくて切ない清水邦夫の傑作戯曲。
金沢市民芸術村の「50歳以上を対象とした講座」という企画から生まれた演劇集団。
基本的に50歳以上が主メンバーで、そこにちらほらと若い客演が入るというもの。
あらすじにもある通り、「マクベス」や「かもめ」「三人姉妹」といった名作戯曲の台詞が続々と出てきます。それも、二人の女優がそれぞれ戦前訳と戦後訳をそれぞれ朗々と読み上げ、その違いを指摘したり、戦前と戦後のリアリズム、といった話が展開されたりと、芝居好きな人なら思わずにんまりしてしまうような作品でした。
女優が4人出てくるだけの小さなお話ですが、も、女優の業というものをびしばし感じさせられました。
作中では特に言及されていなかったのですが、おそらく「時代遅れの女優二人」というのは幽霊だったんだと思います。
とっくにこの世を去ったはずの女優が、いまだに楽屋に居残り続け、来るはずのない出番を待ちながら延々化粧をし続ける。そしてその合間に台詞の稽古を続ける……。
そこに、現在舞台に立っている女優と、そのプロンプターによる舌戦、そして確執。
生きていても死んでいても、女優の執念と妄念はすさまじい。
少しコミカルに描かれているものだから、その壮絶さはよりくっきりと見えるようでした。