なるしまゆり / 新書館

勇吹は人王に向かない……。
三人いるという人王候補は勇吹のほかに……誰?
やがて人王を喰らったカルノは、レヴィの目の前に現れ……!?
王はただ一人なり、次なる人王に挑む者すべてを打ち倒せ!!
カルノと勇吹の互いを思う強い気持ちが福音となれ!!
今、人王をめぐる最終決戦はすでに始まっている……。
あいつを逃すのが俺の目的だ だから 俺が人王になる
待望の新刊!!
いいわーすばらしくいいわー。
今巻は、もう、勇吹とカルノがね。
このふたりの関係性がね。
最高に萌える。
『あのひととここだけのおしゃべり』でよしながふみが言う、やおいですよ。
曰く、「恋愛関係にない人たちを見て、その人たちの間に友情以上の特別なものを感じた瞬間」。そして、「ふたりの関係が性愛に踏み込んでいたら、それをやおいとは言わない」ということ。
勇吹とカルノはもともと行きずりの間柄だったはずで、そもそも生きる世界が文字通り違っていて、言葉すら通じなくて意思の疎通もままならなかった。
それがねぇ。
今巻では、勇吹とカルノは一言も言葉を交わさない。というか、顔すら会わせない。
それなのに、勇吹はカルノの考えていることが手に取るようにわかるし、カルノは勇吹のために動いている。
この、「離れているからこそ見えてくる」強固な信頼関係。
なんにもなかったところから、いかにしてこの関係性が生まれ育まれ築き上げられたのか。読者である僕たちはそのすべてを知っている。
その道のりを思い、その果てにあるものを想像する。
これぞ物語の旨みですよ。これに萌えずに、一体なにに萌えるというのか。
今回、特に心打たれたのは、勇吹が祖父にカルノのことを語るシーン。
「友達が考えを変えてしまったみたいなんだ」
「時間やすれ違いで人は変わる事もある」
「いや たぶん違う 何故か俺には確信が持ててしまうんだ
あいつ変わってない 今でも俺の好きなあいつのままだとしか思えない
ただ 考えを変えたんだ」
すとん、と腑に落ちた。
人はそう簡単には変わらないよね。
変わるとしたら、それは考えが変わるんであって、考え方が変わるんじゃない。
「考えが変わる」ことと「考え方が変わる」ことは、天と地ほども差がある――というか、比べるステージが全然違うのに、意識的に考えないと混同してしまう。
感銘を受けました。
さて。
最後にものすごい爆弾を投下して17巻は幕を引くわけですが、次もまた一年後かなー。
くっそ気になる。
くっそ気になるといえば『原獣文書』。
早く完結させてほしい……。