矢野さんのニューアルバム。
今回はブルームーンカルテットとのセッションということで、多少雰囲気が違うかな、という作品もありました。
幅が広がるのはいいですねー。
前回のアルバムの感想に、「力強さや物語性が失われてしまった」というようなことを書きましたが、物語性ということに関して言えば、今回はそうでもなかったように感じました。「ゼンマイ仕掛け」や「ニーナ」のような力強さはやはり鳴りを潜めていますが。
物語性といえば、5曲目の「モノクロームダンス」。
これは「ニーナ」ばりの、まさに物語そのものといった曲でした。
第二の「ニーナ」を狙っているんだろうなーというのが伝わってくるんですが、如何せん、やはり力強さがないため、迫力が足りない。年月の重みが感じられないので、「ある少年と少女が出会い、一世を風靡し、その存在が忘れ去られてもふたりのダンスは生き続ける」という物語が、逆に薄っぺらく聞こえてしまってちょっと残念。
10曲目の「人生よ上等だ」。
タイトルを見たとき、三代目魚武濱田成夫の『人生よ あなたは、まるでこの俺様の子分。』がぱっと思い出されて、何か勝手にすっごい俺様な歌なのかと思っていたら、なんか違った。
どっちかというと、コーヒーカラーの「人生に乾杯を!」っぽかった。
ちょっとくすっと笑えてしまう、前向きな曲でした。いい。
収録曲最後の「青い月夜に」の中の歌詞、
心が音符になってふる ふる…
降れども 降れども積もらぬままに
跡も残さず消えるとも
その様々が人の心をいつまでも照らすのです
は、実に詩的で秀逸でした。しかもこの曲をアルバムの最後に入れておくというこの心憎い演出。
アルバムの締めにまさに最適でした。