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監督:近藤喜文

金曜ロードショーで。
久しぶりに見れてよかったー。




感想を書き始めたら、なんかこれ前にも書いたような気がしてきた。
うん。書いてた
なので、今回は前回とは別のことを書こうと思います。

この作品、ところどころで言葉の使い方が絶妙だと思います。
中でも一番なのが「ヴァイオリン作り」。
ヴァイオリン職人、じゃなくて、ヴァイオリン作り。
そう呼ぶことで、「そういう職業に就きたいんだ」、ではなく、「そういう人になりたいんだ」、というニュアンスの方が強く表れていて、聖司の夢を表すにふさわしい表現だと思います。
また、同じく、雫が自らの作品のことを「小説」でではなく「物語」と呼んでいるところもいいですね。
小説というとどうしても商業ベースに乗ったものを想像してしまいがちで、目指す先は職業作家というイメージがつきまといます。が、「物語」には確かにそうしたイメージの付きまとう余地があるかもしれないけれど、どちらかというともっと私的なものを想像せずにはいられません。それは雫の内面を語る行為であり、将来目指すべき職業を定めたというより、こちらも「こういう人になりたい」、というニュアンスが強く表れているように感じられます。
いい意味で適度に現実感を奪うことで、青春のきらめきを際立たせているのではないでしょうか。


またまた別のところ。
この作品の一番の見どころ――山場は、聖司と雫、そしておじいさんとその仲間たちとのセッションのあの場面だと思います。
いいですよねー。
聖司がちょっと強引にヴァイオリンを弾き始め、雫が「カントリーロードだ」って気づいて、前奏の間に息を整えて歌いだす。なんて初々しい。青春だなー、なんて思っていたら。
ようやく硬さもほぐれてきた頃におじいさんとその仲間たちが登場。それぞれが楽器を持って即興で合わせていく……。
雫もいつの間にか手拍子で参加しちゃったりなんかしちゃって。
楽しくて体が勝手に動く、なにかせずにはいられない、といううずうず感が画面一杯にあふれていて、もう見ているこちらまでそれらが伝染してくるようでした。というか、私には伝染しました。
この作品には、良くも悪くもきゅんきゅんするポイントがいろいろありますが、このシーンが一番きますね。自分的には。
以前、『ONCE ダブリンの街角で』の感想に音楽が生まれる瞬間を捉えた稀有な作品と書きましたが、『耳をすませば』のこのシーンもまた、音楽が生まれるまさにその瞬間を捉えていたのだと思います。
こういうの見ちゃうと、ライブ行きたくてたまらなくなります。


あと、今回はニコニコ動画で本名陽子さんが出演して実況中継が行われたらしく、その席で「その後」を訊かれ「すぐに別れると思う」と答えたということで話題になっていましたが、私もその意見に一票です。
あの二人はあの時期に出会い、つかの間一緒に過ごしたからこそ特別たり得たのであって、あれがずっと続いていくとはとても思えません。
結局どちらかが、もしくはどちらもが夢破れ――というか、現実に埋もれていき、相手のことがまぶしくて見ていられなくなるんだろうなーという気がします。
そして全然別々の道に進んだ二人がそれぞれ違う人と結婚し子どもを設け、十何年ぶりくらいに同窓会で再会し、苦笑いしながら当時のことを振り返る、みたいなのがいい。いいっていうか、そういうのが読みたい。そんな二次創作ないかな。
うん、まぁ、それはともかく。
なんだろう、こう、主人公二人の地に足のついてなさ、が、中学生特有の若さにすべて起因していて、その後に劇的ななにかを連想させないところが、また、いいんだと思います。
身近で。そしてそんな身近な人物だからこそ、青春のきらめきがより強く感じられるんじゃないかな。

近藤喜文さんの最初で最後の長編監督作。
惜しすぎる才能ですね。
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